【売却】医療機関の事業承継の進め方と成功の秘訣
「事業承継を検討しているんだけど、どうやって進めたら良いのだろうか??」
まず何から始めたら良いのかお悩みの院長先生も多いと思います。
顧問税理士に相談しても、買い手を見つける範囲が狭すぎてなかなかマッチングしなかったり、知人づてで買い手を探しても、特にクリニック規模だと個人ドクターを探すことになることから、知人の範囲では見つけられないなどの課題が発生します。
事業承継はおそらく多くの方が未経験で、人生で一度経験するかしないかという大きな出来事ですが、以下のような手順で進めていくことになります。
医療機関の事業継承の流れ
医療機関の事業継承は以下の9つのステップからなります。
STEP① 目的の明確化
大まかで良いのですが、ご自身の中で、「なぜ病院を売却するのか??」目的を明確にしておくことが重要です。
例えば、今の患者さんに対して、引き続きサービスを提供することで安心してもらいたいということを目的とするのであれば、若い現役の勤務医の方に継いでもらうのが良いと思いますし、とにかく高い値段で売りたいということであれば、企業への売却を検討しても良いと思いますし、相続や節税対策も事前に済ませて、手元に残るお金を極大化することを意識する必要があります。
このように、目的によって買い手の対象が若干異なってくるため、何を第一優先とするのかは明確にしておいた方が良いでしょう。
STEP② 買い手を見つける手段の明確化
買い手を探す方法は以下の4つが挙げられます。
- 自分の友人や取引先
- 銀行などの金融機関
- 顧問税理士、会計士
- M&A業者(大手~小規模仲介会社、医療専門M&A業者:Doktor)
一番手数料も発生せず事業運営も安心できそうなご自身の周囲から探す手段がよさそうに見えますが、売却情報の漏洩などうわさが広まる、間口が狭すぎて買い手が見つからない、価格交渉の際に妥当な金額が分からず揉めるなどのリスクが存在しております。
手数料はかかりますが、情報の取り扱いが堅牢で買い手の間口が広く、複数の案件を行った経験から妥当な譲渡価格を算定できる業者に依頼するメリットも大きいと思います。着手金を求める業者もありますが、基本成功報酬の手数料となるので、複数の業者を使って見つけると可能性も広がります。
銀行や税理士の場合、手数料もそこまでかからないケースがありますが、買い手を見つけてくる範囲が非常に狭いので、どこかのM&A業者を紹介されるか、もしくは案件として停滞してしまう可能性も高いです。
M&A業者の場合でも、大手の上場している業者は病院やクリニックにそこまで注力している傾向は見当たらず、手数料もものすごく高いので、なかなか個人クリニックだと依頼しづらい状況です。
医療に特化して全国から買い手を探せる業者は限られているので、そこを見極めて業者を使っていくことが成功確率を高めるポイントと言えます。
STEP③ 業者への依頼
基本無料で初期相談を受けることになりますが、スムーズに要件を伝えるためには、以下の内容を準備しておくことをお勧めします。
- 売却理由
- P/L、B/Sなどの財務諸表(3年分)
- 譲渡希望価格
- 譲渡希望時期
- 設備、人材の状況
- 不動産賃貸契約書 など
進めていく過程で、業者からもこの情報が欲しいという一覧をもらい、ご自身で集めることになるため、事前に用意しておいた方が手間がかからずに済みます。
STEP④ 案件情報の開示、買い手の探索
業者へ案件情報を伝えた後、業者が買い手を探索します。特に病院やクリニックですと、買い手としては、
- 企業
- 分院を作りたい医療法人
- 開業したい勤務医
がメインとなりますが、結局のところ医師免許がある人が買う、もしくは買い手が常勤の医師を連れてくることが出来ないと、買収が完了しても病院を運営できないので、買い手もただ単にWEBに案件情報を載せて開示したとしても、なかなか問合せが発生しない状況に陥りがちです。
普通の事業承継と異なり、買い手がかなり狭まることから、医療特化のM&A業者に依頼することで、的確に買い手になり得る層にアプローチすることが出来ます。
また、買い手候補が多くあらわれる方が、適切な人材を選べるメリットの他に、譲渡価格も需給で決まるためその価格を引き上げる効果も得られます。
情報開示もその病院が特定されるかどうかのギリギリのラインまで開示したほうが良く、買い手の興味関心を引くことが大切です。
とはいえ、売却情報が特定されてしまい、スタッフなどに知られてしまうと、
「うちの病院どこかに売られるんだ。。。」
と不安をあおる結果になってしまうので、特定されないもののある程度病院の概要が伝わる情報開示を目指すと良いと思われます。
STEP➄ 業者との契約
以下の2つの契約を取り交わす業者が多いと思います。
- 秘密保持契約・・・売却情報を買い手候補や提携業者に開示する際の情報の取り扱いについて定めたもので、事業承継では機密情報をと取り扱うため、その取扱いに関する契約書です。
- 基本合意契約・・・業者への依頼する業務範囲や手数料などを定めた契約書で、特に手数料の部分についてはよく目を通しておく必要があります。業者によっては法外な手数料を取るところもあるので、うまく譲渡が出来て譲渡価格の現金が得られたとしても、手数料で大半取られてしまうケースが発生しないように、手数料が高い業者は交渉するか、それに応じてもらえなければ見送る姿勢が必要となります。
STEP⑥ 買い手との面談
買い手候補が見つかった場合、業者同席の上その方との面談となります。
1時間程度の面談となりますが、そこで双方の要望や人物そのものを理解する場が提供されます。
よく医師の間ですと、出身大学や医局の話になりがちですが、あまりそこを突っ込み過ぎたり、相手を事細かに探るような質問をし続けると心象が悪くなり、破談になる確率が高くなるため、あくまでも友好的に面談を行うように心がけると良いと思います。
STEP⑦ 事業評価(デューデリジェンス、バリュエーション)
「デューデリジェンスって何??」
と普通の方であれば思うのも当たり前で、M&Aの業界に携わる人であればなじみがありますが、それに携わらない人からすると縁のない単語だと思います。
売り手の希望価格と買い手の希望価格がある状況だと思いますが、実際に第三者的にいくらぐらいで取引したら妥当なのかを、財務(資産・負債の状況など)、法務(約款・契約関係など)、事業(生産・販売活動など)、労務(会社組織・従業員など)を経営の視点から調査し、事業にかかわるリスクを洗い出し、世の中の標準的な価格だとこれくらいで取引すると妥当という金額を算出する作業と思っていただければと思います。
具体的にどのようなことを行うかというと、買い手が専門家に依頼し、その担当者が病院を訪問して、帳簿を閲覧したり、書面ではわからない会社の状況などをチェックします。
このときになって簿外債務や不適切な経理処理、労務問題などが発覚すると、買い手が受ける印象が悪くなるため、譲渡価格の引き下げが行われたり、破談になったりするケースがあります。
重大な事実を隠蔽すると、あとで訴訟問題に発展することもあるので、マイナスの情報であるほど事前に開示しておくことが望ましいです。
STEP⑧ 条件交渉
事業評価の結果、事業承継を進めることに問題なければ、経営者、役員、従業員の処遇や、最終契約までのスケジュール、その間に遵守すべき事項、守秘義務などに関する合意事項について固めます。
その後、事業承継について細かい条件を詰めていき、最終的な売却価格を決定します。
STEP➈ 最終契約・代金受け渡し
最後の手続きで、譲渡の内容(株式譲渡・事業譲渡など)、売買価格を定めた最終契約書を取り交わし、買手側から譲渡代金を受け取ります。
どこまで関与するかは取り決め次第ですが、患者さんや従業員の引継ぎ期間を長めにとって、買い手の医師の方が業務に困らないようにフォローしてあげるのも重要だと弊社では考えております。
知らない患者さん、スタッフ、周囲の環境(医師会や近隣病院との連携など)に慣れるまで、ある程度のフォローがないと、新院長に負担が増大しトラブル発生の原因となります。
事業承継は結婚と同じ
以上が事業承継の手続きとなりますが、事業承継も結婚も近いものがあり、すべての希望を満たすような相手を求めたり、相手の情報を事細かにチェックしたりという行為は、婚活においても婚期を逃す大きな要因となります。
「医師ライセンスを持った方が後を継いでくれる。」
それだけでも病院の運営が継続され、患者さん、従業員の雇用は守られるので、ある程度の妥協と思い切りが事業承継の成功要因となります。
「開業を検討している現役の医師に、ぜひ継いでもらいたい。」
というご要望がございましたら、ぜひ弊社にお問い合わせいただければと思います。