M&Aにおける従業員との面談、引き継ぎ/解雇のポイント

M&Aによって従業員はどうなる?
結論から申し上げますと、M&A後の従業員の解雇は通常ほとんどありません。
事業譲渡であろうと、株式譲渡であろうと、買い手企業は従業員を含めて譲り受ける前提である場合が多いです。買い手側には株式または事業を譲り受けるだけの財力がありますし、特に中小企業は事業自体が従業員個々のパフォーマンスに頼っている場合が多く、買い手企業にとっても従業員を引き継ぐメリットの方が大きいのです。
従業員の希望等により譲渡前に離職となる場合においては、退職金手当の増額や再就職先の補償などを提示し、希望退職といって、解雇という形ではなく従業員自らの意思での退職という形で進めることも可能です。
給与面や福利厚生は維持できるのか
M&A後、解雇はされないとしても従業員への待遇が変わってしまわないかと心配に思うオーナー様もいるかもしれません。
しかし、雇用契約内容や給与など含めたほぼ全ての待遇を変更せずに譲渡する方法はあります。これは、譲渡契約書にて、「従業員への待遇の内容を引き継ぐ」といった記載を含めることで効力を発します。
また、売り手企業は、M&Aを検討する際に、こちらの理想に沿う引き継ぎをしてくれる買い手企業を選定することで、自社企業の従業員を守ってもらえることが十分可能となります。
従業員が辞めてしまうリスク
M&A後に従業員引き継ぎによって起こりやすいトラブルを二つ紹介いたします。
①もともと不満が多い職場
一つ目は、今まで従業員が我慢していた不満がM&Aによって浮き彫りになることです。もともと持っていた不満に加えて、「自分たちは買収された」という不安や会社への不信感が沸いてしまうケースです。
対策としては、売り手がM&A以前の規則や待遇を見直し改善しておくことが第一です。財務体制管理などに従業員が不信感を持っている場合は、クリアにする体制を整える必要があるでしょう。問題がある場合はM&Aにおいても支障となりますので要注意です。従業員から信頼され、働きやすい環境を整えておくことは、M&Aにおいて会社の価値を高めることにも繋がります。
②モチベーションの低下
二つ目は、従業員のモチベーション低下による退職です。これは、主に買い手企業と従業員のコミュニケーション不足が原因となる場合が多いです。職場の企業方針や運営方法、環境などが急激に変化することは、従業員にとって大きなストレスになり得ます。
せっかく待遇維持で引き継いだにもかかわらず、従業員が離職してしまうことは避けたいので、売り手も買い手も従業員のコンプライアンス維持のために譲渡前からよく話し合う必要があります。運営方法などを変更するにあたっても、従来の体制を維持しつつ、ゆっくりと少しずつ進めていくことをお勧めいたします。
従業員への説明、面談のタイミングも重要
従業員に対して、M&Aについて通知・説明するタイミングはとても重要です。ただ早く伝えればいいというわけではありません。間違えたタイミングで伝えてしまうと、従業員に必要以上の混乱を招いてしまい、転職を考え始める人も出てくる可能性があります。
一般的に伝える時期は資金決済(クロージング)した後に、売り手企業の経営者様と買い手企業経営者様の立ち会いのもと、と言われております。その際には、経営者様の口から、従業員を納得させられる内容で伝えなければなりません。具体的には、従業員の雇用契約や今後の待遇について、M&Aの目的と至った経緯、どうしてその買い手企業と契約になったのかという理由など、明確に伝えるのがポイントです。
Doktorでは、従業員の雇用維持など、売り手の意向に沿った買い手探しや、雇用継続のための問題点整理などをサポート致します。また、従業員に伝える際のフォローもしております。お気軽にご相談ください。