買収戦略② M&Aにおける買収企業の選び方とは?

時価純資産法

企業が成長をするための手段として、ダイナミックかつスピーディーに事業構造を転換することができる手段である“M&A”はとても有効な手段です。

しかし、当然のことながらむやみにM&Aを行っても、企業にとってポジティブな結果は得られません。前もって十分に練られた買収戦略を策定してから実行していくことが、M&Aの成功には不可欠でしょう。

医療機関M&Aをコラムでは、M&Aの買収戦略の策定方法について、段階ごとに3回に分けて解説していきます。

  1. M&Aの目的と必要なスキルとは?
  2. M&Aにおける買収企業の選び方とは?(本記事)
  3. M&Aで新規事業を獲得する方法、メリットとは?

今回は実際に買収先を探す段階において、M&Aを通してどのような成長を目指すことができるか、M&Aを通してどのような効果が期待できるかなどを軸に、M&Aにおける買収企業の選び方を紹介していきます。

M&Aを通してどのような成長が見込めるか?

M&Aは企業の成長にとても有効な手段ですが、具体的にはどのような成長が見込めるのでしょうか。

M&Aを活用する戦略として、既存事業分野関連事業分野新規事業分野と大きく3つの分野に分けられます。今回は、既存事業分野、関連事業分野でのM&Aにおける代表的な戦略パターンと、それぞれが企業にどのような成長・経済的効果をもたらすのかを見ていきましょう。

既存事業分野における買収戦略

既存事業分野を取り扱う企業や事業を買収する場合、そのM&Aの目的となる代表的な戦略は「事業拡大戦略」「エリア拡大戦略」「ロールアップ戦略」の3つがあります。

事業拡大戦略

事業拡大戦略とは、同業者を買収、あるいは同業者と経営統合することで事業規模を水平方向に拡大し、規模の経済性を活かして経営効率を高める戦略です。多くの業界の大手企業同士による合併や経営統合がその典型例として挙げられます。

エリア拡大戦略

エリア拡大戦略とは、その名の通り、地理的に新たな市場を拡大するために、他地域で事業展開する同業者を買収する戦略です。国内においても、また海外に対しても行われる、他地域の同業者の買収がその典型例です。

ロールアップ戦略

ロールアップ戦略とは、比較的規模の小さい同業者を複数買収することによって、経営資源の共有を促進し収益性の改善を短期間で達成することを試みる戦略です。経営効率の低い小規模事業者が多くいるような業界(たとえばタクシー業界やホテル業界など)で見られる戦略で、ロールアップ戦略を通してその業界の覇権を狙う企業がその典型例です。

既存事業分野におけるM&Aで期待できる経済性の効果は、主に「規模の経済性」による収益性の改善です。「規模の経済性」とは、事業規模を拡大することによって、事業にかかるコストが下がり、経営効率が高まることを指す言葉です。既存事業分野におけるM&Aでは、この効果が顕著に表れることも多く、買収後に共同購買などの規模の経済性を生かしたコストシナジーが発揮されることによって、劇的に短期間で業績が改善される例も多いです。

関連事業分野における買収戦略

関連事業に対するM&Aにおける戦略には、主に2つの類型があります。「バリューチェーン拡大戦略」「製品ラインアップ拡大戦略」の2つです。

バリューチェーン拡大戦略

バリューチェーン拡大戦略とは、商流の上下にある関連事業企業を買収することによって原材料の安定供給、仕入れ値の節約、技術や顧客ニーズの取り込みなどを目指す戦略です。卸売り企業による小売企業、メーカーの買収や、メーカーによる開発・設計会社の買収がその典型例です。

製品ラインアップ拡充戦略

製品ラインアップ拡充戦略とは、自身の企業とは機能、価格帯、用途、対象顧客などの異なる関連企業に対しM&Aを行うことによって、取り扱いラインアップを充実させるという戦略です。例えば、大衆向けのアパレル企業によるベビー用品販売店の買収などが挙げられます。

関連事業分野におけるM&Aでは、主に、「範囲の経済性」による業績の改善が期待できます。「範囲の経済性」とは、経営資源の共有によって、複数の事業展開をしながら全体の経営効率を高めることです。関連事業であれば、技術やノウハウ、物流、広告等を共有化することができるので、より効率的な経営が行えるのです。

M&Aによる買収で規模と範囲、どちらを拡大するか?

買収先を探すにあって、規模を拡大したいなら既存事業分野を買収、範囲を拡大したいなら関連事業分野を買収するといったように、M&Aの目的別に買収先が異なることを理解していただけたか思います。

次回以降のコラムでは、新規事業分野に対するM&Aや、買収戦略策定のためのフレームワーク作りについても詳しく扱いたいと思います。

  1. M&Aの目的と必要なスキルとは?
  2. M&Aにおける買収企業の選び方とは?(本記事)
  3. M&Aで新規事業を獲得する方法、メリットとは?

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