【M&A】医療法人の買収先を探すにはロングリスト・ショートリストの作成
企業が成長をするための手段として、ダイナミックかつスピーディーに事業構造を転換することができる手段である“M&A”はとても有効な手段で、医療分野でも、「規模の経済」によるシナジー効果を目的に、病院やクリニック、薬局、介護施設などの医療機関、医療法人の買収を進めて事業規模の拡大を検討する医療法人、企業も増えています。
しかし、当然のことながらむやみにM&Aを行っても、企業にとってポジティブな結果は得られません。
前回のコラム(買収先候補となるクリニック・薬局など医療法人の情報収集の方法)では、どの診療科や事業分野を営む病院やクリニック、薬局などの医療機関、医療法人をターゲットにするかという買収戦略が策定されたのちに、買収対象分野の医療法人や企業に関する具体的な情報を集める段階で、どのような情報源を活用することが有効なのか、そしてそのような情報に対してどのようなアプローチがあるのかということをご紹介しました。
このコラムでは、買収を希望する診療科や事業分野を営む病院やクリニック、薬局、介護施設などの医療機関、医療法人が定まり、その買収対象企業群に関する情報の収集がある程度まで進んだ後に必要となる、「ロングリストの作成」。そして、さらに自分の企業の成長戦略に合致した企業を抽出するために必要な「ショートリストの作成」について、どのような価値判断で行うと有効なのか、また、どのような項目を設けるべきなのかということを紹介していきたいと思います。
- 買収先候補となるクリニック・薬局など医療法人の情報収集の方法
- 医療法人の買収先を探すにはロングリスト・ショートリストの作成(本記事)
- 薬局、クリニックなど医療法人を買収する際の評価基準とは?
ロングリストとは?
買収対象となる診療科や事業分野を営む病院やクリニック、薬局、介護施設などの医療機関、医療法人の企業群が定まり、それらの医療法人や企業に対する情報収集がある程度進むと、それらをリストアップする必要があります。こうしてできた企業のリストを「ロングリスト」と呼び、一般的には、20~30社ほどの医療法人や企業名と、診療科や事業所などの簡単な基礎情報がリストアップされていることが望ましいとされています。
ロングリストの作成
ロングリストを作成するといっても、買収対象となる診療科や事業分野を営む病院やクリニック、薬局、介護施設などの医療機関、医療法人からなる企業群から、むやみに20~30社ほどを抽出すればいいわけではありません。企業の選定を行う際に、より有用なリストにするためには、M&Aを実行する際に必要な情報をリスト化する必要があります。ロングリストを作成する際にリスト化するべき情報としては、
- 代表者名
- 本社所在地
- 主たる取扱商品
- 売上高
- 利益
などが挙げられます。
また、病院やクリニック、薬局、介護施設などの医療機関、医療法人が買収対象となる場合にはさらに、
- 医療法人名
- 診療科目
- 病床数
- 展開する事業所
などの情報も、判断基準として大切な基礎情報となります。
こうした基本的な情報をリスト化することにより、この先のショートリストの作成や具体的な買収対象となる診療科や事業分野を営む病院やクリニック、薬局、介護施設などの医療機関、医療法人や企業の選定がスムーズになるのです。
またこの程度の項目であれば、対象会社のホームページや信用調査会社の企業検索から集めることが可能であるため、比較的容易に作れることもロングリストを作成する利点です。当然ながら、買収対象企業に対して買い手企業様が重視することは異なりますので、それぞれのニーズに合わせた条件を追加したり、買収対象企業群の数によっては
- 取扱商品
- 販売先
- 所在地
- 売上高
- 診療科目
- 病床数
などの条件を“足切りライン“として設定したりする場合もあります。
ショートリストとは?
ロングリストの作成が終わり、買収対象企業群を20~30社ほどにリストアップすることができたら、次は「ショートリスト」を作成する段階に移ります。
ショートリストとは、ロングリストをもとにより細かい条件で抽出された企業リストのことであり、通常は5~8社ほどに絞り込まれるのが望ましいとされています。
ショートリストの作成
20~30社ほどのリストであるロングリストから、5~8社ほどを抽出するのですから、ショートリストではより詳細な項目を設定しなければなりません。ショートリストでは、以下のような項目をリスト化することが企業の選定に有効です。
- 企業名、本社所在地、設立年月、資本金、代表者の名前と年齢
- 事業内容、沿革、事業所や営業所、グループ会社の概要や従業員数
- 株主構成、取引銀行、主要な取引先およびその系列
- 役員構成、後継者の有無
- 時価総額(上場企業の場合)、社債の格付け、信用調査会社による評価
- 過去3年間の売上高、利益、借入金、純資産、一人当たりの売上高や利益
- 近年の事業概況、設備の状況
- 想定される事業の強みや弱み
また、病院やクリニック、薬局などの医療機関、医療法人の買収を検討する際には
- 診療科目
- 資産として保有していると想定される医療機器
- 病床数
- 常勤医師数
などの情報も、ショートリストの作成の際に用いるとよいと思います。
こうした項目を設置する際には、個社ごとの綿密な情報収集が必要となります。対象企業が上場企業ならば、有価証券報告書等から比較的容易に得ることが可能ですが、非上場企業となると公開されている情報が少ないため困難です。そのため、信用調査会社の個社レポートを取り寄せたり、業界関係筋から情報収集をしたりするほか、営業マンを訪問させるなどの方法もあります。
まとめ
円滑にM&Aを遂行するためには、ロング・ショートリストを作ることが有効であることや、具体的なリストの作り方がわかっていただけたのではないでしょうか。
弊社では、買い手企業様のご要望をお聞きしながら、買収対象となる企業を検討・ご紹介することが可能で、上記のような作業は買い手企業様の負担にならずにM&Aを進めることもできます。特に医療機関のM&Aをご検討の企業様は、お気軽に弊社までお問い合わせください。